今回お話を伺ったのは、ギター講師の川名葉月さんです。
埼玉県狭山市を拠点に、ギター教室やカラオケレッスン、作曲などをされています。

川名さんのレッスンのコンセプトは「音を楽しんでほしい」。

理論よりも「まずは弾けるようになる」に重きをおいた楽しいレッスンが好評で、生徒さまはプロから初心者の方まで幅広くいらっしゃいます。

「教えるのが好き」とご本人がお話しされる通り、川名さんは人の成長に関わることが本当にお好き。レッスンの話になると熱量が2倍に!

生徒さまの「できた!」を分かち合えることがなによりも嬉しいそうで、「どうしたら楽しんでいただけるか」を常に考えながらレッスンをしているとか。

教える立場としてご自身のスキルアップにも励まれ、ヴォーカルとしても活動されています。

そんな川名さんですが、ギター講師になる前はビジュアル系バンドのギタリストとしてご活躍されていました。

ニューヨークで演奏したり、ライブに3000人以上を動員されたりといった華々しい実績を残されているものの、33歳のときに表舞台に立つことをあきらめたそうです。

なぜ、川名さんは表舞台に立つことをあきらめたのか?

そして、あきらめたことで手に入れたものは一体なんだったのでしょうか?

音声で聞きたい人はこちら

川名葉月プロフィール

Gelee103 Project / ギター講師 川名葉月

埼玉県所沢市出身。
ギター歴25年。
父をきっかけに、中学校時代からギターを始める。

20代はビジュアル系バンドのギタリストとして活躍。
ニューヨークでのライブツアーや、3000人規模のライブを経験する。

バンド解散後、講師としてギタリストの育成に注力。
「弾けるようになる」ことに重きをおいた実践的なレッスンで、プロのミュージシャンから初心者まで幅広い層から支持を受ける。

趣味で始めた競馬を極め、競馬コンサルタントとしての一面も。
2011年より「まずは当てようぜ」をコンセプトとし、予想力と馬券力を徹底的に高める「馬券中立アップの会」を始動。

ワイルドな見かけによらず根はおちゃめ。
ラーメンはあっさりよりもこってり派。

Gelee103 project Music&Website
馬券的中率アップの会

ステージで活躍することをあきらめるまでの軋轢と葛藤

佐藤 どうぞよろしくお願いいたします!川名さんのあきらめたことってなんでしょうか?

川名 自分がステージに立って活躍することをあきらめました。

子供の頃から、アイドルだったりタレントだったり、テレビに出たいっていう気持ちが強くて。そういうタイミングでギターも始めました。

専門学校を卒業して本格的にバンド活動を始めて、日本中いろいろ廻ってたんですけど。どうしても芽が出ないというか、うまくいかないところがあって。人間関係もあったりして。バンドだったんでね。

33歳の時にあきらめましたね。見切りをつけました。

佐藤 そうだったんですね。川名さんって、3000人規模のライブをされたりニューヨークに呼ばれたり、実績を残されているので。あきらめたことが「ステージに立つこと」っていうのは意外でした。

川名 年齢制限っていうのもあるんですね。20代ぐらいで結果を残してお客さまをつかんでおかないと、ビジュアルの先の「音楽」っていうところでやるのは難しいんですよ。

ビジュアル系バンドの見た目は「本当にやりたい音楽」を届ける手段

佐藤 ビジュアル系バンドの魅力ってなんでしょうか?

川名 「ビジュアル系」バンドっていう名前の通り、メイクして着飾ってっていう「見た目」が魅力。音楽の前にそっちですね。

見た目から入るので、女性客を掴みやすいんですね。ビジュアル系バンドって、J-POPとかロックバンドよりもお客さんが増えやすいんです。

「あのバンドのあの曲が刺さる」っていうのじゃなくて、まずは見た目。「かっこいい」から入ってファンになってもらう。

その次に「どんな曲をやってるんだろう」っていう段階に入るわけです。

本当にやりたい音楽や歌詞を届けるための「見た目」で、そのためのお客さん集め。

お客さんが集まれば口コミで広めていただけるので。そういう理由もあって、ビジュアル系バンドとしてやっていました。

演奏されている川名さん
川名さんのFaceookより

佐藤 私から見るとビジュアル系バンドの人って、派手にしたくてしているイメージが強かったので。

その先の、音楽を届けるために派手にしているというのは意外でした。

派手に魅せることでまずはお客さんを集めて。基盤を整えてから、本当にやりたいことっていうステップがあるんですね。

川名 そうですね。ビジュアル系を選ぶ人って、「自分の音楽を広めたい。でも、ちょっとおしゃれしたような格好だとお客さんがつきにくい」ということを実感しているんですね。

だからああやって派手なメイクをするんです。音楽だけのファンって、なかなかつかないんですよ。

2000年とか1990年代であれば音楽だけでも勝負していけましたが、2000年以降はなかなか難しくなってきて、ビジュアル系が流行っていったんです。

「音楽を広めたい!けど、まずはお客さん!」みたいな。

「本当にやりたい音楽」を伝えるまでに感じた限界

川名 バンドっていうのがすごく難しくて。自分一人でやっていればいいんですけど、チーム内で話が合わないとか。

一般的によく言われる「音楽性の違い」だったり、ビジネスや会社でも出てくる「方向性の違い」だったり。

バンドでも、自分らを「どうブランディングするのか」「どうマーケティングしていくのか」っていう、ビジネスにも繋がる要素がすごく多くて。

若いうちはまだ、それがあんまりわかんないんですよね。

いろいろ学んだ今の知識で20代半ばを迎えているのであれば、もうちょっと上手くやれたと思うんですけど。やっぱりその頃はね、とんがってたしね。全然うまくいかなくて。

廻りまわって年齢を考えたら「ちょっとな…」って感じ。

「次のステップに行くために、あきらめないといけないかな」っていうところにつながっていくんですよね。

ビジュアル系バンド時代の川名さん

次のステップに行くために。あきらめた先で活きたのはバンド時代の実体験

佐藤 バンドを解散されたあとは、なにをされたのでしょうか?

「次のステップに行くためにあきらめを選択した」とお話しされていましたが。

川名 後輩の育成ですね。自分ができなかったことを伝えて、その人がなんとか上にいけるようなサポートをやりたくて。

「とにかく音楽を仕事にしたかった」っていうのもあります。そのためには、表舞台でずっとやっていたらだめっていうところで。

ギターの先生だったり歌の先生だったり、作曲して曲を提供したりとか。

そうやって「託す」ために、時間がほしかったんですね。そのために表舞台をあきらめました。

佐藤 その「託す」っていうのはどんな感じなんですか?

川名 今 思えば、「こうやればよかった」とか「これが正解だ」って分かるものがいくつかあるので。

金の卵みたいな子たちがいるんですけど、その子たちに「レールを示してあげたいな」っていう思いがすごい強くて。そこからですね。

でも最終的には、「とにかく音楽に携わって仕事がしたい」っていうところです。

佐藤 自分がずっと表舞台に出ていたら育成に注力できないですもんね。

川名 表舞台で突っ切れればいればいいんですけど、なかなかそういうのがね。

運や魅力も必要だし、サポートしてくれる仲間とか、支えてくれる人とか。

大勢いなきゃいけないし作らなきゃいけないし、作ってもらうような行動もしなきゃいけないところなんですよね。やっぱりそこができなかったからね。

佐藤 川名さんって最初から教えるのが好きで、今のお仕事を始められたんだと思っていました。

いろいろやりとりをさせていただく中で、めんどう見がいいというか、頼りやすい雰囲気をお持ちの方だなと感じていたので。

「自分が表舞台に立ってやりたかった」っていう時があったというのは本当に意外です!

川名 いや、でも本当にそこでしたね。「俺がスターだ!」みたいな気持ちでずっといましたから、ずっと。

それぐらいじゃないとやっていけない世界ですし、生意気なこともさんざん言いましたし、生意気言ってビンタとかもされましたし。笑

佐藤 オラオラしてた感じですか?笑

川名 してましたね。ちょっとわがままでしたね。笑

目上の人に対してすぐ「わー!」って言ったりとかしてましたね。

ギター講師として大切にしていることは「音を楽しんでもらう」こと

佐藤 川名さんのWebサイトに、「生徒さんが弾いてみたい曲を3ヶ月以内に弾けるようにします」と書いてありますよね。

あれって、習う側の気持ちに立っているからこそ出てくる言葉だと感じます。

なんとなく上手くなりたくてギターを習う人もいますが。楽器を「やってみたい」って思うきっかけって、「これが弾きたい」といった動機が多いんじゃないかと思います。

日々、どんなことを考えながらお仕事をされているのでしょうか?

川名 「音楽」っていう字のごとく、「音を楽しんでほしい」っていうのがあります。

自分はギターを教えることがすごく多いんですけど。「これが基本で、コードがどのこうで楽譜を読めないやつはだめだ!」みたいな、そういう理論とかではなくって。

まずは弾いてもらって、弾ける喜びを感じてもらいます。

「弾きたいから教えて!」って来てるから、「弾かせなきゃ!」っていう。理論はあとづけですね、とにかく楽器を楽しんでもらいたいので。

弾けることで自信をつけてもらったり、もっとギターを好きになってもらえたりもしますし。

今、本当にギターを弾く人が少なくなってきて、ちょっとブームが終わってるんでね。そこも活性化していきたいなって思いますし。

やっぱりとにかく楽しんで、楽しませることですね。「興味を持ってもらえるにはどうしたらいいか?」考えながら、生徒さんとはいつも向き合っていますね。

「もう理論はいらねぇぜ!」みたいな。

佐藤 そうなんですね!お教えするのに「理論はいらない」って、いつ気がついたのでしょうか?

川名 20歳ぐらいに自分がスクールに通ってたんです。「基本を覚えなきゃいけないんだ!」って思って1年ほど通ったんですが、めちゃめちゃつまんなかったんですね。

自分から理論を学びたいと思って通ったものの「くそつまんねー」って思って。その1年間は、自分としては全然伸びなかったと感じました。

その時に、やっぱり「習う、勉強するのは楽しくないと覚えないな」っていうことに気がつきました。吸収力が全然違う。

それを痛感して、自分が教える時は「とにかく興味を持たせて楽しんでもらう」ということを大前提でやっています。せっかく教わっても生徒さんが伸びないので。

「あの子はどうしたら弾けるようになるか?」考えた末に見つけた答え

佐藤 「自分が教える側になったら、楽しんでもらわないと伸びないな」って気がついたのは、何歳ぐらいの時ですか?

川名 22歳ですね。

佐藤 その時って、まだ教えてないですよね。

川名 そうですね。習う側です。

ただ、地元の後輩や友達に教える機会はありました。やり始めの子たちだから、自分ができることを教えてもできないんですよね。

「今の自分はこういうテクニックで弾けます」っていうのを、これからやるっていう子に教えたところで全然できない。

だったら「その子のレベルに合わせた中で、かっこいい感じの弾き方を考えて、教えてみよう」っていうところから始めました。

そしたら「楽しい!」って言ってくれて、すぐ覚えたんですよ。「楽しい」って思うと、すぐに家でも練習するんですよね。

そんなことがあって、「まずは楽しませるところから」っていうところをすごく感じています。

佐藤 22歳のお若い時で、教える立場ではなくむしろ自分でやっていく立場なのに、「楽しくレベルに合わせてやらないと相手は成長しない」って気がつけるのがすごいなと思います。

川名 当時、自分ができることをそのまんま教えたら、「できないからやんねーや」っていう反応が多かったんですよね。

最初は「なんでだよ!怒」ってなってたこともあるんですけど。「あいつが伸びるにはどうすればいいんだろうか?」って考えるようになりました。

そしたら「簡単でもいいからとりあえずやってもらおう!」って感じになりましたね。

佐藤 そうなんですね。本当に、もともと教えるのがお好きなんですね。

川名 好きですね。教えたことで「できるようになった!」って喜んでる姿を見るのがすごい好きです!

「よかったじゃん!やったね!」みたいな。笑

「俺よりできるよ!それ!」みたいなのも言っちゃいますね。そのぐらい喜びを一緒に分かち合うようなレッスンをしています。

佐藤 へー!でも、本当に…。それだけ教えるのが好きな人でも、オラオラやってた時代があったんですね。なんなんですかね、その時期って?笑

川名 モテたいんです。笑笑

目立ちたがりで、出たい時期なんですよね。

ロックの先輩方とか見ると、ちょっと下品な話、女を抱いたとかしょっちゅうなわけで。そういう憧れもやっぱりありましたし。オスなんでね。笑

佐藤 20代だったらね。若いですからね。笑笑

川名 若いし、メイクでなんとでもなりますし。笑

あきらめて得られものは「実力」と「分かち合い」

佐藤 川名さんが、あきらめて得られたことってなんですか?

川名 一番は「実力」ですね。教えることで、一番自分の身になるんですよね。

たとえば、「こういう弾き方を教えます。こんなアプローチを教えます」っていったら、やっぱり自分ができないと教えられないです。

教えることで、自ずと自分の復習になっちゃうんですよね。そこが一番ですね。

「レッスン料いらないよ!」って言っちゃいたいぐらい嬉しい瞬間

あとは「これできました!練習した弾き方でライブをやったらうまくいって、お客さんが増えました!」っていう、成功を分かち合えるようになりました。

地下アイドルにギターを教えたことがあって、お客さんが増えたっていう報告をもらったことがあったんです。

「ギターガーデンで一緒にセッションするお仕事をもらえました!っていうふうに言ってくれて、本当に分かち合いましたね。「よかったね!よかったよ!」と。

「レッスン料いらないよ!」って言っちゃいたいぐらい。

佐藤 川名さん本当に言っちゃいそうですもんね。笑笑

川名 そうそうそう。笑

それぐらい「分かち合える」っていうのが嬉しかったですね。それまでは、こんな気持ちになったことがなかったんで。

「バンドは自分のために」「表舞台は自分のために」みたいなことしか考えていなくて。

仲間と一緒にバンドをやっていましたが、そんな分かち合えるような気持ちは持ち合わせてなかったんですね。

それを考えるとやっぱり人間らしくなったっていうか、そういう気持ちが得られました。

いつまでも練習しない生徒さんが、レッスンに通い続けてくれる理由

佐藤 ご自身の気持ちの、内面的なところで。あきらめてから変わったことってありますか?

川名 なんだろう、尖ったものが削ぎ落とされたっていうか…。人を思いやれる気持ちが強くなったのかな。

佐藤 自分に対して優しくなったとかはありますか?

川名 自分に対しては変わってないですね。 人に対してはすごく変わりました。

楽しませることに重きをおく分、次のレッスンの時に「やってきてない」とか「やれなかった」とか、そういう人に対しても寛容になりましたね。「いいんだよ〜。楽しくやろうよ!」みたいな。

逆に、練習したいっていう気持ちを植えつけられなかった自分に腹が立つことはあります。 「楽しませられなかったんだ、興味の維持が足んねぇや…」みたいな。笑

佐藤 そうなんですね。ご自身には厳しくなったんですね。笑

川名 そうなんですよね。1人だけいるんですよ、いつまでも練習しない人。笑

佐藤 それでも川名さんのところ通い続けるんですよね。

川名 そうそう。最近、気がついたのですが、「この空間が好きなのかな。レッスンしている時間が好きなのかな」って思いました。

うまくなるんじゃなくて、「一緒にぺちゃくちゃ喋りながらギターを弾くことが目的かな」って。ちょっと思ってるんですけどね。

佐藤 あ〜。そういう方はいらっしゃると思います!

音楽を仕事にしたい人へ。本当に、楽しくやってほしい!考えるよりやろうぜ!

佐藤 30歳前後の川名さんと同じような状況におかれている人や、「仕事として音楽に携わりたい」と思っている人へのアドバイスをいただけますか?

川名 これはいろんなジャンルに言えることだと思うんですけど。本当に、楽しくやってほしいです!

自分が楽しくないと教える活力にもならないですし、踏み出す気にもならないし。

すべてに興味を持って、前向きに行くしかないですよね。ちょっとでも後ろ向きなことを思ってしまうと、腰が重くなって一歩踏み出せないし。「笑顔を大事に」ですね。

あと、「考えるよりやろうぜ!」っていう感じですね。
「やれ!動け!!」みたいな。笑

川名さんのFaceookより

川名 「やろう!やろう!動け!」みたいな感じですね。 それはどこのジャンルでも一緒だと思います。

「自分の音楽や曲を提供したい」じゃあそうするためには、「まずは曲を作ってストックを10曲ほど貯めてみよう」っていうその時間がもったいない!

「もうそんな曲作りはいいよ!営業していこう!自分を売り出してこう!もう仕事取りながら曲作ればいいじゃん!」みたいな。

過去の自分と同じ境遇の人がいれば、そんな感じに伝えますね。

今の自分にも必要なことですし、永遠の課題です。

やっぱり完璧にやりたがるというか、しっかり自分の地盤を固めてから踏み出したい人って多いと思います。

でも、それじゃあ遅いんです。遅れをとっちゃうので、踏み出しながらそのつど考えよう。その方が失敗も多くてすごい大変なこともあると思うんですけど、充実してますよね。

そんな経験を得てもらいたいですよね。 やってもらいたいし、僕自身がやっていきたいです。

佐藤 ありがとうございました!

あきらめから生まれる「音を楽しむ」空間。ギタリスト川名葉月が本当に伝えたいもの

自分がステージに立って活躍することをあきらめた川名さん。

あきらめたことで手に入れたのは、大切な人と分かち合える嬉しさだったり、教わる側・教える側が一緒に技術を向上していける楽しさだったり。

そこには、人と人とが関わることで作り上げられていく「音を楽しむ」空間が存在していました。

それってもしかすると、ビジュアル系ギタリストとしてご活躍されていた川名さんが本当に伝えたかった音楽なのかもしれません。

あなたが楽しさを感じる瞬間は、どんな自分でいる時ですか?

あなたが笑顔になれる方向に、まずは踏み出してみると、本当に楽しく分かち合える日が得られるのではないでしょうか。